先日、故あって恩師から服部四郎著の『蒙古字入門』をいただいた。ちょうど時期的にいろいろと重なって、いいかげん学問も諦めようかと弱気になっていた矢先のことだった。
服部四郎といえば、『音声学』という幻の名著の著者で、言語学を学ぶ者ならば知らぬ者はいない存在だが、この『蒙古字入門』を読んで、改めてそのすごさをまざまざと実感させられた。
蒙古文字(縦書きのウイグル式モンゴル文字)には、通常使われるものの他に、経典などでチベット語音やサンスクリット語音を表すための十七世紀の初に作られた、ガリック字という字母がある。同書には、その活字体のローマ字転写の表も収められていて大変便利である。序文によると、ガリック字母の字体はシュミットの文典や同文韻統(乾隆内府原刻本)などを参照して決定したとのことである。
中でも特に感動させられたのは、蒙古文字で使われるモンゴル数字の書体に二通りあるということである。蒙古文字にはチベット数字とよく似た特別の数字があって、文の中では時計回り90度に横に倒し、縦組みで用いられる。チベット数字との関係や書体に二通りある理由についても知りたかったが、それ以上の詳しいことにまでは言及されていない。
とにかく、モンゴル語は奥が深くて、まともに腰をすえてやろうと思うと学ぶべきことが多くてきりがないようだ。つくづく、モンゴル語という言語を選んでよかったと思う。
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