モンゴル語研究文献の入手法

2009年4月29日0 コメント

モンゴル語研究のための文献の入手方法としては、国内の外国籍書籍の蔵書が豊富な図書館から探す、外国図書を専門に取扱っている書店に注文する、自分で現地に行って購入する、海外にいる友人知人に頼んで取り寄せるなどの方法がある。もちろん、日本語で書かれた文献もかなり豊富にあるので、国内の図書館でモンゴル語関係の書籍を探してもよい。論文などはオンラインで全文が閲覧可能なものもある。海外の論文も同様である。残念ながら中国のサイトでは論文閲覧は有料のことが多いようだが、それでも探せばかなりの情報を収集することができる。さらに、ちょっとした情報だったら国内外のホームページを検索して知ることも可能だ。

ではまず、もっとも基本的な検索サイトの紹介から。
http://www.google.com/intl/mn/ (モンゴル語版Google)
http://cn.yahoo.com/ (中国語版Yahoo!)
http://www.baidu.com/ (百度)

図書館の蔵書を探すためには、OPAC(オンライン蔵書目録)を利用すればよい。最近ではたいていの図書館でOPACを備えているので、専用の端末を利用して検索できる。もちろん、自宅のPCから検索して必要な資料の所在があきらかになったらそこに行って閲覧してもよい。以下の国立情報研究所によるOPACを利用すれば、各図書館(主に大学図書館)の蔵書を検索することができる。

http://webcat.nii.ac.jp/ (Webcat)

とはいえ、やはりモンゴル語研究のための文献を所蔵する図書館は限られている。モンゴル語書籍を探すなら、以下のリンク集をたどって各図書館のOPACから検索したほうがよいだろう。

http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/directory/language_east.html#mon (モンゴル語書籍所蔵図書館のリンク集)
http://asiaopac.ndl.go.jp/ (アジア言語OPAC)

全国の大学図書館には、多言語対応OPACを導入するところが増えてきている。そのため、キリル文字モンゴル語を入力して検索したり、簡体字の中国語を入力して中国で出版されたモンゴル語書籍を検索するなどが可能だ。以下のサイト(福山市立女子短期大学 附属図書館)は多言語対応OPACの一例である。
http://www.lib.fukuyama-jc.ac.jp/opac/expart-query?mode=2

デフォルトではローカルデータベースの検索のみになっているようだが、画面左上の「国立情報学研究所」にチェックを入れると、全国の大学図書館に所蔵されているモンゴル語書籍を検索可能だ。例えば、толь(モンゴル語で「辞書」の意味)という語を入力して検索してみると、「国立情報学研究所で133件見つかりました」という結果が表示される。つまり、国内の図書館にある約133種類のモンゴル語辞書のリストを一望できるということだ。

とはいえ、なぜかこの検索結果にはモンゴル語ではなくロシア語のものや、全く関係ないものも含まれている。また、内モンゴルで出版されたモンゴル語辞書などは別の方法で検索しなければならないし、このデータベースに全ての蔵書が登録されているとは限らない。だから冊数は大体の目安と考えた方がいいだろう。

さて、試しに検索結果の一番最初に表示されたWörterbuch Mongolisch-Deutsch(モンゴル語-ドイツ語辞典)をクリックしてみると、書誌情報と所蔵図書館のリストが表示される。この辞書は国内の9箇所の大学図書館に所蔵されているようだ。「請求番号」も表示されるので、当該の図書館に行って手続きをすれば閲覧できるというわけだ。

上記では各図書館の蔵書を調べる横断検索の方法を紹介したが、やはりこれだけでは全ての図書館の蔵書を調べることは難しい。しらみつぶしに探そうとするなら、やはり個々の図書館のOPACを使って気長に探したほうがよいだろう。それではこれまでに紹介したリンクに含まれていなかった図書館を順不同で紹介する。

財団法人東洋文庫
(http://www.toyo-bunko.or.jp/)

ここの図書館なくしてモンゴル語学を語ることはできないほど、貴重な書籍が豊富に収められた図書館だ。モンゴル語書籍は、ホームページの[データベースの検索]→[Ⅰ書誌]→[モンゴル語資料 検索]を辿っていけば検索することができる。また、ロシア語で書かれたモンゴル語、ブリヤート語、カルムイク語などに関する書籍などを検索するには、同じく[Ⅰ書誌]のページの[キリル文字資料]から検索するとよい。

早稲田大学図書館蔵 モンゴル語書籍目録(Unicode版)
(http://db2.littera.waseda.ac.jp/wever/mongol/goLogin.do)

トップページには「中国刊行 モンゴル文文献目録」と書かれているが、モンゴル国において刊行されたモンゴル語書籍も検索することができる。歴史、文化、社会制度などに関係した書籍が豊富だ。近年に刊行された辞書、用語集については、ここの図書館の蔵書が最も充実しているようだ。

早稲田大学 学術情報検索システム(WINE)
(http://wine.wul.waseda.ac.jp/)

意外と見落とされがちだが、早稲田大学にはかつて語学研究所という機関があったため、旧語学研究所の蔵書にも多少のモンゴル語書籍がある。これらは上述の「早稲田大学図書館蔵 モンゴル語書籍目録目」には含まれていないようなので、早稲田大学の図書館蔵書として検索すればよいだろう。

東京大学OPAC (https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac-query)

東京大学の言語学科には服部四郎、小沢重男などの優れたモンゴル語学者も在籍していた経緯もあり、さらに東洋史関係の資料も含めると、モンゴル語書籍の蔵書はかなり豊富である。ただし、最近になって刊行されたモンゴル語書籍はあまり充実していない。

東京大学東洋文化研究所漢籍目録 http://www3.ioc.u-tokyo.ac.jp/kandb.html

文字通り漢文で書かれた書籍が主に収められている。「蒙」というキーワードで検索すると、「啓蒙」だの「蒙求」だのと関係ないものもかなりひっかかるが、ちまちま探していくとモンゴル語関係の書物を見つけることができる。『東大東洋文化研究所所藏江上博士收集蒙文佛典』などという書物も収められており、管見の限りでは唯一ここの図書館にしかない珍しいものだ。

学習院大学東洋文化研究所
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/rioc/knowledgecenter/archive.html

学習院大学東洋文化研究所の蔵書は東アジア学ナリッジセンターのデータベースで検索することができる。モンゴル関係の蔵書が豊富と謳われており、善隣協会などの資料が数多く収められている。モンゴル語研究に関する資料も多少含まれている。

静嘉堂文庫
http://www.seikado.or.jp/menu.htm

日本および東洋の古典籍および古美術を収蔵する文庫。数多くの貴重な古典籍と古美術品を収蔵しており、内外の古典籍を研究者向けに公開する私立の専門図書館であると同時に、併設する静嘉堂文庫美術館を通じて収蔵品を広く一般に公開する美術館活動を行っている。研究に資するため原則として原本を提供するという方針をとっているため、きわめて貴重な宋・元版を除き、明以降の中国の版本などは全て古典籍の原書が閲覧に供されている。閲覧は予約制で紹介状が必要。モンゴル語関係の蔵書については未確認。

財団法人 無窮會
http://www.mukyukai.jp/index.html

神道、国学、国語国文、国史、漢籍、漢詩文、民俗学の古書。これらに関する明治以降の研究書、雑誌。閲覧のみが可能で、大学からの紹介状と会費を添えて入会した者のみ閲覧可能という、非常に敷居の高い図書館だ。無窮會東洋文化研究所という機関が存在するが、こちらは主に漢文学などを扱っているようで、モンゴル語関係の蔵書については未確認。同ホームページのリンク集には、漢籍の蔵書を検索するためのデータベースへのリンクが豊富だ。

日本でモンゴル関係の蔵書が豊富なのは、主に言語学、地域研究、文化人類学、歴史などの分野でモンゴル研究が盛んな大学、研究機関の図書館だが、この他にも見逃せないのは仏教系の大学図書館だ。

大正大学 附属図書館
http://www.tais.ac.jp/lib/index.html

仏教関係の蔵書はもちろんのこと、特に満蒙関係の資料などのモンゴル史の文献も充実している。なお、まだデータベース化が完了していないモンゴル関係の貴重書も収蔵されている。

佛教大学図書館
http://www.bukkyo-u.ac.jp/lib/

モンゴル語訳の『入菩提行論』など、モンゴル語関係の蔵書が充実している。

国際仏教学大学院大学 附属図書館
http://www.icabs.ac.jp/lib/index.html

『蒙古語訳甘殊爾』をはじめ、内モンゴルで出版されたモンゴル関係の書籍が数多く揃っている。昭和初期のモンゴル語教科書、辞書なども含まれており、中には他の図書館ではめったにお目にかかれないような蔵書もある。

駒沢大学図書館
http://www.komazawa-u.ac.jp/cms/library/

内モンゴルで出版されたモンゴル関係の書籍が充実している。また、出版年は不明だが和装本の『蒙古篆字』という珍しい書物も所蔵されている。邦書もモンゴル関係の書物はかなり揃えがいい。

龍谷大学
http://opac.lib.ryukoku.ac.jp/hp/index.html

モンゴル史関係の蔵書が充実している。

京都大学図書館
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/search/index.php?content_id=1

キリル文字モンゴル語、内モンゴルで出版されたモンゴル語書籍、モンゴル関係の邦書までを含めると、膨大な冊数が収蔵されている。ここの図書館でしか閲覧できないというものはさほど多くないが、全体的に見て非常に充実している。京都大学にも言語学科があるためか、モンゴル語研究書籍、辞書はかなり揃えがよい。さらに、同図書館の谷村文庫には、『朝鮮司訳院日満蒙語学書断簡』という珍しい書物が収められている。新村出による解説付きで、京都帝国大学所蔵の板木により新刷刊行されたとのことだ。

一橋大学附属図書館
http://www.lib.hit-u.ac.jp/service/index_Ja.html

同図書館には外国雑誌センターが設置されている。これは、日本国外で出版される学術雑誌を体系的に収集し全国的な利用に供することを目的に、文部省の特別予算措置を受けて設置されたもので、9つの国立大学附属図書館が外国雑誌センターの指定を受けているのだが、このうち人文・社会科学系は一橋大学附属図書館と神戸大学人文・社会科学系図書館が指定を受けている。以前、一橋大学附属図書館でモンゴル国の新聞を定期購読しているという話を聞いたことがあるのだが、筆者がOPACにより検索した限りでは探し出すことができなかった。

三康図書館
http://www.f2.dion.ne.jp/~sanko/

約25万5千冊の蔵書を誇り、仏教、宗教系の専門書が豊富だ。入館は有料で1回100円。モンゴル関係の書籍は特に豊富というわけではないが、近代(大正から昭和初期)のモンゴル語教科書、辞書などが何冊か収められている。

成田山仏教図書館
http://naritasanlib.jp/

近代のモンゴル関係の書籍が豊富で、中にはかなり珍しい書物も含まれている。特にモンゴル仏教関係の学術誌が充実しており、モンゴル語関係の書籍や論文も他の図書館では見かけないような珍しいものが散見される。ここの図書館はちょっとした穴場かもしれない。

では、いよいよモンゴル国にある図書館の紹介に入ろう。モンゴルの総合情報ポータルサイトであるOllooの記事によれば、モンゴル国内には350ヶ所の図書館が存在するという。このうち、主な図書館へのリンクを集めたページとしては以下のものが便利だ。

American Center for Mongolian Studies
http://webs.banjig.net/listdweb.php?lc_id=65

Banjig Вэб лавлах
http://www.mongoliacenter.org/mnlibrary/index.php?option=com_content&task=view&id=27&Itemid=40

上記のリンクを参考にしながら、各図書館について詳しく紹介していくことにする。ただし残念ながら、モンゴル国の図書館のホームページにはリンク切れのページや外部からのアクセスが不可能なものも少なくない。

Улсын Төв номын сан
(モンゴル国立中央図書館)
http://www.mnlibrary.org/ (アクセス不能?)

国立国会図書館の林明日香氏が行った調査によると、2004年現在での蔵書数は350万冊(マニュスクリプト200万冊を含む)で、そのうちチベット語の資料が120万冊である。同図書館に対するインタビューでは、モンゴル国内で出版された図書の大部分は収集できているとのことだ。現在、同図書館が所蔵しているモンゴル語資料のすべての書誌データは、マニュスクリプト資料も含めて電子化されており、館内のコンピュータから検索することができる。ただしインターネットによる外部からのアクセスは不可能だ。2001年までに整理された図書の目録“Монголын үндэсний ном зүйн бүртгэл мэдээллийн сан I”(モンゴル国内書誌登録情報)がCD-ROM で販売されている。(出典:アジア情報室通報 第2巻第3号)

Монгол Улсын Үндэсний номын сан
(モンゴル国立民族図書館)
http://www.nationallibrary.mn/

まだサイト構築中のようだが、蔵書検索のページも作られており、将来的にはOPACによる検索も可能になるものと思われる。モンゴル学に関連するキリル文字モンゴル語、伝統文字モンゴル語、チベット語、サンスクリット語の資料を非常に豊富に所蔵する。同図書館からは、1921~2000年に出版されたキリル文字モンゴル語、伝統文字モンゴル語の書籍情報を含むCDが出版されている。

Үндэсний төв архив
(民族中央アーカイブ)
http://www.archives.gov.mn/

1674以降のモンゴル史に関連する文献資料が保存されている。

さて、本来ならばこれに続いてモンゴル国の図書館情報を書くはずだったが、先に別の情報をまとめてみた。

日本でモンゴル語書籍を手に入れるとしたら、モンゴル国の書籍を扱っているサイト、または中国の書籍を扱っている書店に注文するという方法がある。

Vimo-Nomundalai
http://jp.mongolianbooks.com/
モンゴルで出版されている書籍、DVDやCDなどを日本在住者向けに販売するサイト。基本的にモンゴル語表示だが、日本語でのメールの問い合わせにも応じてくれる。

Internom
http://www.internom.mn/
モンゴル国初の2階建て大型書店Internomによる書籍通販サイト。表示はすべてモンゴル語で、問い合わせ等にはモンゴル語によるやり取りが必要だ。

中国で出版されたモンゴル語書籍を入手するなら、神田や神保町を訪れるのが手っ取り早い。ほとんどの書店は通販での注文も可能だ。

亜東書店
http://www.ato-shoten.co.jp/
店舗は神田にある。神田警察署の付近。モンゴル語書籍が豊富。

東方書店
http://www.toho-shoten.co.jp/
店舗は神保町にある。モンゴル語書籍は2階にある。

内山書店
http://www11.ocn.ne.jp/~ubook/
店舗は神保町にある。モンゴル語書籍は1階の奥にある。

アジア文庫
http://www.asiabunko.com/
店舗は神保町にある。内山書店と同じビルの5階にある。アジア各国に関係する書籍を取り扱う。モンゴル関係の邦書が豊富。

中華書店
http://www.chuka-shoten.co.jp/
店舗は神田(神保町)にある。モンゴル関係の書籍はさほど豊富ではない。

ビブリオ書店
http://www.biblio.co.jp/
かつてはアジア系の書籍が豊富な店舗を神保町(水道橋方面)に構えていたが、そちらは閉店になったようだ。まだモンゴル関係書籍を取り扱っている可能性があるので、確認されたし。
(続く)


他にもまだ執筆途中の情報がある。本当は人には内緒にしておきたいような情報も含まれているのだが、さらなる情報提供を望まれる方は、下記のメールフォームからご連絡いだだければこっそりお教えしよう。
http://itako999.blogspot.jp/p/blog-page_11.html
この記事が気に入ったら...

コメントを投稿