『モンゴル語の空間表現について -遊牧地域における特徴的な使い分け』, 2004年.
モンゴル語の空間表現の使い分けを調べることを目的として、モンゴル国の都市部と遊牧地域において計369名を対象としたアンケート調査を実施した。
アンケートは二回に渡って行い、第一次調査では主に都市部で、第二次調査では主に遊牧地域でデータを集めた。第一次調査では量的な調査のみを行ったが、第二次調査では量的調査に加えて質的調査も行い、個々の空間表現の細かな意味の違いなどを確認した。本稿ではこのうちの量的調査の結果を中心とする分析と考察を試みた。
アンケートは実際に模型を使用した実験的なもので、特に量的調査では同じような文を提示された場合にどんな条件によって解釈が変わってくるかを調べることを主眼とした。調査の過程および分析の結果、モンゴル語の空間表現に特徴的なさまざまな現象が明らかになってきた。
モンゴル語では、「東西南北」と「前後左右」はそれぞれ同じ語彙によって表わされるが、そのどちらの意味を優先させるかには個人差があり、特に居住地域によって大きく異なる。全体の傾向としては、都市部においても遊牧地域においても位置関係を前後左右で言い表すことが多い。
ただし、特に遊牧地域では都市部よりも、物体の位置関係を東西南北によって把握しやすいという顕著な傾向が認められた。
前後左右によって位置を表わす場合、参照物が固有の前後を持つか、二次元の物体であるかなどには関係なく、モンゴル語では「対峙的-基本順」で表現されやすいという特徴がある。
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